top of page

​セミナー・講座

Seminar

TOP > セミナー・講座 > 学校関係者向け > 教育者研究会 > 会場レポート

教育者研究会 会場レポート

教師としての心を高める

​新潟県・長岡会場

講演者:北川治男・モラロジー研究所副理事長、麗澤大学名誉教授

演題「対話の教育 -生きる力をはぐくむ」

教師は特権を持った職業である

 「人生は生涯学習のプロセスと累代教育のプロセスから成り立つ」と北川氏。次の世代の育成に携わる=他者形成を通して自己を形成するのが、人類が脈々と受け継いできたプロセスであると言います。自身の子供のみならず、多くの児童・生徒を育てることをライフワークとする教師は特権を持った存在であり、子供たち一人ひとりの人生を左右する可能性すら秘める、たいへん責任ある職業であることを訴えます。
 喜び、悲しみ、やりがい、葛藤……。子供たちとの対話を通して得る、さまざまな感情。そんな中でも、一人ひとりの生き方・価値感を受け入れ、共感する姿勢を持つことが大切であることを語ります。モラロジーの創建者・廣池千九郎が残した格言「他を救うにあらず己を助くることにあることを悟る」、「他人の欠点我これを補充す」などを引用しながら、子供たちとの関わりが教師自身の人間的成長につながるとの考えを示しました。


道徳的価値観を構成する2つの軸

 道徳的価値観の捉え方として提示するのは、2つの軸。


①横軸=空間的・水平的関係
 自分→家族→地域→国→国際社会→自然環境と広がる、自身を今、取り巻くもののこと。これらへの感謝の心を育てることが道徳の時間に求められています。


②縦軸=時間的・垂直的関係

 モラロジーでは①に加えて、過去にも目を向けます。親・祖先が紡いできた生命の連続性や、伝統文化がはぐくんできた歴史。「みずからをこの世に生み出してくれたものへの感謝の念を教師自身がはぐくみ、次代を担う世代へ伝えていくことで、子供たちはいのちの大切さを実感し、生きる力を養うことができるのではないでしょうか」。

道徳の授業法

講演者:横山利弘・元文部科学省教科調査官、元関西学院大学教授

演題「特別の教科 道徳の指導と評価(理論と実践)」

ローテーション授業の提案

 年間35時間ある道徳の時間ですが、教諭が自信をもって授業に臨めていない現状を指摘。その理由は「教材について研究する時間を確保できないから」。授業、部活動、生活指導……。多くの業務を抱える教諭にとって、「道徳の時間の内容項目(道徳的な価値観)について研究し、深く知ることは難しい現状がある」と言います。
 そこで紹介したのが「ローテーション授業」。1つのテーマを各教員が受け持ち、複数のクラスを順に指導する、という、文部科学省が推奨する仕組みです。

 

 教諭にとってスムーズな授業をしやすくなり、子供たちの道徳的価値への理解も深まることが期待されています。


教材を用いたサンプル授業

 
ここでは『ブラッドレーのせい求書』(142ページ~)、『ブランコ乗りとピエロ』(84ページ~)の2つを題材に、参加者が児童・生徒役となり、これらを熟読。その上で以下の設問を順に投げかけます。

  • 変わった(生き方を立て直した)のは誰?

  • 物語の中での中心的な出来事は何?

  • 登場人物が変わったのはどの場面?それはなぜ?

■「変わった(生き方を立て直した)のは誰?」の要点
 「子供が主人公になりきること、登場人物それぞれの立場を考える(生い立ち・経歴、誰のために行動しているか)ことが大事。自分のこととして考え、追体験することで初めて心情を理解できる」

■「登場人物が変わったのはどの場面?それはなぜ?」の要点
 「言ってみれば、道徳的価値を自覚する箇所。内容項目に基づき、どの箇所で何を伝えたいのか、分析して読んでいく必要がある」

道徳の授業法を学ぶ

​愛知県・一宮会場

実践発表

現職教諭による実践発表

​東京都・世田谷会場

発表者:世田谷区立世田谷小学校教諭

主題名「友を思う心」

学習指導要領の内容項目「B.友情、信頼」

教材名『泣いた赤おに』

「自分や友達のよさに気づき、共に生きる」力をはぐくむことを目的とした道徳の教授法を紹介。自分と他者の考えを比べ、意見を交わすことをためらう児童が少なくないことが背景にあります。
 「人は一人では生きてはいけない。さまざまな人と関わるからこそ悩み、喜び、成長していく。互いを理解し、信頼し合える友達がいることで人生は豊かになることを知ってほしい、そして友達を大切にする道徳的心情を育てたい」との考えから、以下のように展開しました。

①子供たちへの投げかけ
 授業の初めに「自分の好きな友達のことを思い浮かべて。目をつむって考えてみて」と提案。子供たちからは「一緒に遊ぶと楽しい」「優しい」などがあげられました。

②教材の朗読
 子供たちを資料の世界に引き込み、考えを深めさせるために、読む際の間や抑揚に注意します。場面に合わせたBGMも効果的です。

③発問
 「張り紙を見た時、赤おには青おにに、心の中でどんな言葉をかけたでしょう?」
青おにの手紙をパネルで掲示。発問の際に披露すると、子供たちからは歓声が。

④意見交換
 発問に対する自身の意見を発表。さらに他者の意見も聞き、さまざまな考え方があることを理解します。

⑤板書
 出た意見を分類して板書。黒板の下部には赤おにの反省を、上部には感謝の思いを記しました。子供たちが道徳的価値を多面的・多角的に捉えられる板書の仕方をあらかじめ計画しました。

⑥獲得した価値の見える化
 学習を通して考えたことをワークシート(B6サイズ)に記入し、先生からのコメントを添えて教室に掲示。自己肯定感や学級への参加感を高める効果があります。

bottom of page