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心づかいQ&A

​「心づかいQ&A」について

ニューモラルで人気のコーナー。
モラロジー研究所の玉井哲講師が、さまざまなお悩みに答えます!!

Q:親の責任を迫る引きこもりの息子

 私どもは3人の男児に恵まれました。現在、40代の長男は他県で家庭を持ち、30代後半の次男・三男と同居しています。三男は小学生のころに不登校になり、現在は引きこもり状態です。最近は「自分がこうなったのは、『善悪の判断』や『正々堂々とした態度』を教えてこなかった父親に責任がある」と迫るようになりました。私は親として、どのように償うことができるでしょうか。息子の将来のために、何をしてやれるでしょうか。(70代・男性)

A:すべてをかけて、もつれを正す勇気を

 

 30代後半になるご子息が、小学校時代からの不登校に始まり、今では引きこもりの状態になっているとのことです。本人も長い年月を経て、なんともやるせない気持ちが募り、その原因を「親が正しい教育をしてくれなかったからだ」と責め立てているようですね。親としても、いろいろ手を尽くしてきたものの、今もって自立できないでいる息子に、自分たちの未熟さを反省しつつも、なんともしてやれない現状への無力感が、いたく感じられます。
 何が原因であるかは別にして、親が責任を回避すれば、事態は時の経過と共に悪化するばかりです。ここは「子供たちと共に事態を受けとめよう」という、プラスの覚悟が必要です。
 戦後の高度経済成長期を生きた私たちの世代は、自由に物の豊かさを実現することをよしとする空気の中で育ちました。しかし、自分自身が親の立場になったとき、子供たちの心の成長に十分な配慮をしてきたかと顧みますと、さまざまな試練や葛藤に「持ちこたえる力」を養わずにきてしまったのかもしれません。残念なことですが、ご子息も青少年期の心の葛藤をうまく克服できず、自然に発達する自意識や自尊心に対し、心が調わぬまま成人していることになります。親として、してやれることは限られ、子供との対立や抵抗も、時と共に大きくなっているのを実感されていることでしょう。
 ここは、専門家の手を借りることが必要です。精神科医やカウンセラー、さらには地域の自立支援センターなどとも相談し、本人の意思で動き始めるように導く道を探りましょう。冷静に過去を受けとめ、自分自身を取り戻すことを目標に、自分で歩み始めることを支えてくれる人と出会えることが、現状を打開する鍵になるからです。
 このような他人の援助は不可欠ですが、その基本は家族みんなの足並みです。親の責任において、家族全員がこのもつれた糸をつむぎ直していく覚悟を共有したいものです。なんといっても両親と子供たちとの間に、お互いの愛情と信頼と尊敬を取り戻す機会にしてほしいのです。
 長い間に複雑化した問題を正し、心の傷を癒していくには、不退転の覚悟が必要です。しかし、あなたが全身全霊をかけて、子供の将来のために祈り、どんなに誹謗されても家族と共に人生を全うするという粘り強い親心を持って歩む限り、運命の神は決して見捨てることはないと信じます。
 どうか心を正して、苦悩のうちに犠牲を払うことを喜びとして、大きな勇気を持って歩んでくださるよう祈ります。

平成29年6月号

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